第517章 私は女が好きだ!

辻緒羽の心の中では「うわっ」という言葉以外に、自分の心が受けた衝撃を表現する言葉が見つからなかった。日幸姉は本当に、とんでもないことをやってのけた。

人物が特定されたことで、曽我若菜の盗作の件も、彼女の仕業だと推測するのは難しくなかった。実に見事で、すごい手腕だ。

曽我若菜は彼女の操り人形のようで、言われた通りに動き、すべてが彼女の掌握の中にあった。

前回の盗作事件で、曽我若菜は道化師のように公衆の目にさらされた。

今度はどうだろう?曽我若菜がどんな滑稽な姿で彼らの前に現れるのか、考えるだけでもワクワクする!

隣に座っている大豆田秋白は、スマートフォンを取り出して水野日幸にメッセージを送った:「番組収録が終わったら、帰る?」

番組はまだ収録が始まっていなかったが、水野日幸もスマートフォンを見ていて、メッセージを見た瞬間、歯ぎしりをして、このいやらしい狐が早くから知っていたことを悟り、返信した:「うん」

大豆田秋白:「明日時間があれば、うちに来てくれないか」

水野日幸は彼の家に行く意味を当然理解していた:「いいよ」

大豆田秋白はようやくスマートフォンを片付けた。彼女が母親に薬を処方してから、母親は一ヶ月半服用し続け、状態は確かに大幅に改善していた。もう昼夜を問わず暴れることもなく、人に会っても発狂することもなく、時には彼のことを認識できるようにさえなっていた。

しかし、この期間、彼は彼女に迷惑をかけまいと思い、ずっと母親の病因を探ろうとしていたが、まだ手がかりは全く掴めていなかった。

彼は心の中で分かっていた。長谷川深に会いに行けば、おそらく欲しい手がかりが得られるだろうが、彼にはそんな危険を冒す勇気はなかった。

母親は今、狂っていて、重病だが、少なくともまだ生きていて、彼の傍にいてくれる。もし長谷川深に会いに行けば、母親の命が危険にさらされるかもしれない。

「おい」辻緒羽は彼を見て:「棒付きキャンディーをくれよ」

大豆田秋白は軽蔑的な目つきで横目で見て:「持ってないよ」

辻緒羽は彼をじっくりと観察した。このやつも自分と同じように夕子先生の本当の身分に気付いているのではないか、もしかしたら自分よりも早く気付いていたかもしれないと思った。

しかし、彼の表情からは何の異常も読み取れなかった。