第510章 群衆激昂、命を落とすところだった

番組スタッフは、狂ったようだった。

曽我言助は、この時完全に呆然としていた。しばらくして気持ちを立て直し、必死に審査員たちに目配せをし、手振りで現場を制御するよう合図を送った。

これは生放送なのだ!

生放送だぞ!

夕子先生の言葉は、同時に放送されている。今この瞬間、全日本のテレビの前で番組を見ている視聴者たちの表情が想像できた。

これを言ったのは他でもない、夕子先生だ。城戸修と同じように、デビュー即頂点を極め、無数の人々に崇拝される音楽家であり、日本音楽界の希望と呼ばれる人物だ。

彼女の言葉の重みは想像に難くない!

谷川陽は、この時どうしていいか分からないほど困惑していた。どこかで聞いたことがあるような、似たような感じがする。もし他の人が生放送でこんなことを言ったら、きっと疑わしく思うだろうが、夕子先生は違う。彼女がこのような大きな場で適当なことを言うはずがないと信じていた。