水野日幸も手の甲がピリッと痛くなり、手に持っていたミルクティーを落としそうになったが、長谷川深が素早く受け止めてくれた。
「大丈夫か!」長谷川深は心配そうに彼女を見つめた。
水野日幸は首を振り、藤田清明の手の甲に瞬時に浮かび上がった血筋を見て、思わず息を飲んだ。まるで自分のことのように「見ているだけで痛そう」と言った。
藤田清明も息を飲み、二人の動作と反応は全く同じだった。振り向いて長谷川深と水野日幸を見ると、車椅子を転がして去っていった。
「包帯を巻いてから行きなさい」瑾智は彼を呼び止めた。
「必要ない」藤田清明の声は冷たく、振り返りもせず、誰も見ようともせず、ただ黙々と車椅子を前に進めた。
瑾智は仕方なく、水野日幸を見て、彼女が一言声をかけて説得してくれることを期待した。
水野日幸はその合図を受け取り、軽く咳払いをして「包帯を巻かせて。そのハンマーには錆びがあるから、破傷風の予防注射も打っておいた方がいいわ」
「死にはしない」藤田清明の声は冷たく、明らかな怒りを含んでいた。全身から不機嫌さが滲み出ており、特に長谷川深の前を通る時、矢のような目つきで明らかな敵意を示した。
瑾智は言いかけて止め、結局若者が頑固に去っていくのを見て、ため息をつき、水野日幸を見て「日幸、彼のところに行ってあげて」
初恋の時期の少年が、好きな人が他人を好きだと知って、少し怒るのは当然だ。でも早く諦めて前に進んだ方がいい。
「じゃあ、見てきます」水野日幸はジャンピンを一つとミルクティーを持って、中庭を出た。
長谷川深は隣の空っぽの入り口を見つめ、細長い瞳の奥には、寒い淵のように深い色が宿り、目に見える寒気を放っていた。
「あの少年は、日幸のことが好きなの?」瑾智はそうだと思ったが、どうもそうでもないような気もした。
「彼女のいとこだ」長谷川深の声は冷たく、凍てつくような寒さを帯びており、言い終わるとすぐに立ち去った。
瑾智は彼の去っていく背中を見て、眉をひそめた。空気中に漂う火薬の匂いと酸っぱい匂いを感じ、頭を振ってため息をつき、若者たちだなあ!
しかし、あの藤田家の若坊が日幸のいとこだとは思いもよらなかった。
今聞こうとしても、何も聞き出せないだろう。嫉妬で酸っぱくなりすぎている。