第555章 心配りに満ちた優しい瞳

二人のシーンが終わると、水野日幸のカメオ出演も終了した。

一橋渓吾はまだ撮影を続けることになっていた。一つのシーンで彼は完全に役に入り込み、これまでの撮影以上の出来栄えを見せ、その後のシーンも一発で OK が出た。

水野日幸と出雲絹代は、脇で一橋渓吾の撮影を見学しながら、水野春智たちが合流するのを待っていた。

「アイドル、これ食べてみて、美味しいわよ」村田思は大量のデリバリーを注文していた。ミルクティーやケーキ、名物料理など何でもあり、今は豚足を差し出していた。

水野日幸は既に彼女に食べさせられすぎていて、これ以上食べたら夕食が食べられなくなる。「もう結構」

村田思は彼女に向かってぽかんと笑いながら、今度は出雲絹代に差し出し、笑顔で「おばさま、おばさま、どうぞ召し上がってみてください」

出雲絹代は優しい性格で、人を断ることが苦手だった。食べたくなくても形だけでも一口食べようとしたが、水野日幸が途中で遮った。

「何がしたいの?はっきり言って」水野日幸は遠回しな話をする気はなく、直接彼女の意図を尋ねた。

「別に何もないんです。ただあなたを尊敬していて、私も何がしたいのかよく分からなくて」村田思は言いながら、突然目を輝かせ、何かを思い出したように「アイドル、私を弟子にしてくれませんか!」

彼女は思ったことをすぐ口にする性格だった。

水野日幸は「断る」

村田思は懸命に自己アピールを始めた。「私には才能があるんです。信じられないなら、私のメイク動画や、作ったチュートリアルを見せましょう」

そう言って、スマートフォンを取り出し、SNSアカウントを開いて見せた。

水野日幸のクールな態度は、彼女の表情が読める人にだけ通用した。この空気が読めない人には効果がなく、うるさいとも感じていたが、一目見た途端、目が輝いた。

なるほど!

この少し抜けているような娘のメイクの技術は悪くない。センスもあり、先進的で未来的な感覚を持っている。本当に才能がある子だ。

「アイドル、私の技術があなたには及ばないことは分かっています。アドバイスをいただけませんか?」村田思はメイクの話題になると、すぐに熱くなった。

特に憧れの人と好きなことについて話し合うとき、全力を尽くして、自分にも少しは実力があることを示したかった。何の取り柄もないわけではないことを。