「ゴホッゴホッ」
隣に座っていた水野日幸が、突然咳き込み始めた。
上條千秋は声を聞いて慌てて振り向くと、彼女が顔を真っ赤にして激しく咳き込み始め、瞬く間に涙まで出てきた。慌てて水を差し出し、背中をさすった。
出雲絹代は彼女が喉を詰まらせているのを見て、駆け寄り、上條千秋と一緒に彼女を助けた。
水野日幸は大きなコップ一杯の水を飲み、長い間咳き込んだ後、やっと落ち着きを取り戻し、もう一度咳をしてから話し始めた。「大丈夫、ただ唐辛子で喉を詰まらせただけ」
出雲絹代と上條千秋はようやく安心し、お互いを見つめ合って微笑んだ。
二人が水野日幸一人の世話を焼いて慌ただしくしている様子に、他の人々も心配になり、全員の注目が彼らに集中した。ただ一橋渓吾だけは藤田清明を見て、何か不思議な感覚を覚えた。