第567章 冷酷無情で非人道的

「藤田清明！」藤田清義は冷笑いを浮かべ、彼を睨みつけた。「どこに逃げるつもりだ？」

藤田清明は涙で顔を濡らしながら、鼻をすすり、首を強張らせて強情を張った。「誰が逃げるもんか。逃げようなんて思ってないし、逃げる理由なんてないよ」

藤田清義は彼を見向きもせず、ベッドに横たわる上條千秋の方へ大股で歩み寄った。冷静で冷酷な瞳に、ようやくひびが入り始め、不安と焦りが広がっていった。再び藤田清明を見たときには、怒りに満ちた目で問いただした。「母さんはどうしたんだ？」

よくもまあ、母さんを連れ出しただけでなく、なぜ母さんがベッドに横たわっているんだ。また病気なのか？どんな病気だ？

藤田清明は彼にそう見られ、また身を縮こませ、声も震えていた。「気を...気を失ったんだ」

藤田清義は眉を少し上げ、目の奥の表情はますます冷たく恐ろしいものとなった。

藤田清明はもう何も言わず、ただ瑾智の方を見た。

藤田清義はまるで今になってようやく、部屋にもう一人いることに気付いたかのようだった。鋭い眼差しで、まるですべてを見通すかのように瑾智の方を見つめ、目の奥の表情が次々と変化していく。どこか懐かしい感覚が突然全身に広がった。声は相変わらず冷静で、まるで彼という人物そのもののように、どんな時でも、どんな事が起きても、大きな変化を見せることはなかった。「あなたは誰だ？」

彼が瑾智を観察する一方で、瑾智も彼を観察していた。長谷川深の断片的な話でしか彼のことを知らず、どんな顔をしているのか、どんな人物なのか、これまで全く気にかけたことがなかった。

もっと早くに彼に興味を持ち、理解しようとしていれば、今になって彼らと出会うことにはならなかったかもしれない。

彼がちょうど口を開こうとした時。

藤田清明が突然また前に出て、守るような姿勢で彼の前に立ちはだかり、とても断固とした口調で一字一句はっきりと言った。「この人は父さんだよ！」

藤田清義の目の奥の表情はますます暗く沈んでいき、体の横に下ろした手は固く握りしめられ、体の細胞の一つ一つが震えていた。それでも彼は常に冷静さを保っていた。「彼が言ったのか？」

目の前のこの男性は、確かに父親と雰囲気がよく似ていた。むしろ全く同じと言ってもいいほどだった。

しかし、その顔は極めて見知らぬ顔で、これまで一度も見たことのない顔立ちだった。