第561章 狂ったように追いかける

「家族を探して」水野日幸は言い終わると、すでに立ち上がっていた。長谷川深に一人でもちゃんと食事をするように言い残し、藤田清明を押しながら歩き出した。「おばさまはいつ来られたんですか?事前に言ってくれれば、お迎えに行けたのに」

彼女の母親の出雲さんは単なる社交辞令のつもりだったのに、藤田清明が遠慮なかったのはまだしも、藤田奥様までもが遠慮なく本当に来てしまうなんて。

「母が来るって言ってたじゃないか」藤田清明は思わず彼女に白眼を向けた。彼女の嘘なんか信じない。本当は来てほしくないくせに、口先だけは綺麗なことを言う。

「ああ」水野日幸は彼の白眼を見なかったふりをした。彼女が歓迎しているかどうか、彼自身分かっているはずだ。藤田清義がまた彼女に面倒を持ち掛けてくるに違いない。

飴も二人の後ろについて来ていた。

水野日幸は玄関に着いてから、まだついて来ているのに気付き、しゃがんで抱き上げ、藤田清明を見ながら言った。「先に戻って、すぐ行くから」

藤田清明は戻らず、その場に立ったまま、彼女が飴を抱いて中庭に小走りで戻り、飴を長谷川深の腕の中に置き、その小さな頭を撫でながら家に帰らないように、長谷川深と一緒にいるように言うのを見ていた。

飴も本当に賢く、まるで化けたかのように人の言葉が分かり、ニャーンと一声鳴いて、おとなしく長谷川深の腕の中で甘え、ついて来なかった。

藤田清明は我慢できずに「飴!」と呼んだ。

飴は彼を一瞥した後、くるりと向きを変えて長谷川深の腕の中に潜り込んで甘え始めた。彼には高貴なお尻だけを向け、挑発するかのように尻尾を振り、とても高慢な様子だった。

藤田清明は息が喉に詰まりそうになった。くそっ、猫までも彼をいじめる。彼はそんなにいじめやすい相手なのか?

水野日幸は彼の顔が赤くなるのを見て、怒って踵を返すのを見ながら笑いを堪えた。若坊ちゃんは本当に子供っぽい。まだ飴を呼ぶなんて図々しい。飴が彼に懐くわけないのは分かりきっているのに!

二人は前後して家に着くと、出雲絹代、一橋御祖母、上條千秋は皆キッチンで料理を作っていた。

出雲絹代はお客様に手伝わせたくなかったが、どうしても止められず、一緒に手伝ってもらうしかなかった。まさか上流階級のお屋敷の奥様が、キッチンでの作業を彼女に劣らずこなせるとは思わず、本当に驚いた。