「家族を探して」水野日幸は言い終わると、すでに立ち上がっていた。長谷川深に一人でもちゃんと食事をするように言い残し、藤田清明を押しながら歩き出した。「おばさまはいつ来られたんですか?事前に言ってくれれば、お迎えに行けたのに」
彼女の母親の出雲さんは単なる社交辞令のつもりだったのに、藤田清明が遠慮なかったのはまだしも、藤田奥様までもが遠慮なく本当に来てしまうなんて。
「母が来るって言ってたじゃないか」藤田清明は思わず彼女に白眼を向けた。彼女の嘘なんか信じない。本当は来てほしくないくせに、口先だけは綺麗なことを言う。
「ああ」水野日幸は彼の白眼を見なかったふりをした。彼女が歓迎しているかどうか、彼自身分かっているはずだ。藤田清義がまた彼女に面倒を持ち掛けてくるに違いない。