第581章 すみません、うちの飴はいたずらっ子で

「二番手よ」とスタッフは確信を持って言った。美人は常に人々の目を引くものだ。さっきの女の子は本当に綺麗で、芸能界に入れば、顔だけで食べていけるほどの美しさだった。

オーディションに来た人の中には美人が多かったが、彼女と比べると皆色あせて見えた。彼女は最高級の美女で、国色天香と呼ぶにふさわしい。

曽我若菜はそれを聞いて、目の奥に歪んだ表情を浮かべながら笑って「ありがとうございます」と言った。

二番手!

曽我若菜はすでに怒り爆発寸前だった。

水野日幸のあの小生意気な奴、わざと私に対抗してきているのよ。きっとどこかで私が出雲七先生の新作ドラマの二番手を演じるという情報を聞きつけて、水を差しに来たのね。

川村染の表情も良くなかった。もう一度尋ねた。「本当ですか?」

彼女はマスクとサングラスをしていたが、すぐに分かった。スタッフも彼女だと気付き、少し驚いた後、真剣に頷いた。「はい、二番手です。私は彼女が試写室に入るのを直接見ました。」

川村染は彼女にお礼を言った。

スタッフは興奮を抑えきれず、彼女を呼び止めた。「川村先生、私はあなたのファンです。とても好きです。サインを頂けませんか。」

川村染は今、複雑な心境だったが、それでも頷いてサインをした。サングラスの下の目は、試写室の方向を深く見つめていた。

実際、彼女の地位と身分があれば、中に入って状況を探ることは簡単だった。しかし、水野日幸一人のために自分の品位を落としたくなかった。

曽我若菜は先ほどまで感情を抑えられていたが、水野日幸の行方を知ってからは完全に取り乱してしまった。必死に笑顔を作って川村染を見た。「お母さん、妹が演技をしたいなら、この二番手の役を譲ってもいいわ。」

川村染は彼女の苦い笑顔を見て、思いやりのある言葉を聞いて、心が痛んだ。「何を言っているの。配役に譲るなんてあり得ないわ。実力次第よ。この役はあなたのもの、誰にも奪われることはないわ。」

曽我若菜は少しかすれた声で言った。「私は大丈夫です。これからもたくさんチャンスはあります。この役で妹と私たち家族の関係が良くなるなら、何でもします。」

川村染は目の前の曽我若菜を見て、水野日幸のことを考えると、ますます腹が立った。やはり手元で育てた娘が一番心が通じている。決心を固めた。「行きましょう。契約を結びに。」