車内は、しばらくの静寂の後、また賑やかになってきた。入学初日で、自衛隊での訓練に向かう道中、みんなは自衛隊基地がどんな様子なのか、テレビで見たものと同じなのかと話し合っていた。
水野日幸はイヤホンをつけて音楽を聴きながら、目を閉じて休んでいた。
二時間後、車は目的地に到着して停車した。
水野日幸が江川薫と大方笑子たちと一緒に車を降りたところ、立山蘭が彼女に向かって走ってくるのが見えた。目を真っ赤にして、泣いているようだった。
立山蘭の動きは素早く、あっという間に傍らまで来ると、慌てた様子で水野日幸の腕を掴もうとし、泣き声で言った。「日幸、助けて!」
水野日幸は眉間にしわを寄せ、嫌悪感を隠さずに冷たい目で彼女を一瞥し、避けながら歩き出した。まるで彼女が見えないかのように。