第600章 この足洗い水を飲んでやる

軍事訓練期間の寮は、学校のような快適さはなかった。一つのクラスを単位として、15人が一つの部屋で生活していた。

ベッドは出席番号と名前で事前に割り当てられており、基本的にクラスのメンバー全員が同じ部屋に配置され、とても賑やかだった。

しかし、クラスの誰も水野日幸に近づく勇気がなかった。彼女の冷たく人を寄せ付けない、距離を置く態度を見ただけで、誰も話しかける勇気が出なかった。

大方笑子と江川薫の二人だけは例外で、一人は上下段ベッドで、もう一人は隣のベッドで、時々彼女に話しかけていた。

「お兄さんって本当に彼女がいるの?」江川薫は好奇心旺盛で、一橋渓吾があんなにイケメンで、しかも日幸の兄だから、彼女がいないなら、素晴らしい恋愛対象だと思っていた。

誰がイケメンを好きにならないだろうか!

「うん」水野日幸は頷いた。

「あぁ、私の出会いが遅すぎた」大方笑子は溜息をつき、さらに詮索した。「きれいな人?どこの学校?」

クラスの他のメンバーは、日幸に話しかける勇気がなかったが、彼女たちは事前に接触していて、彼女がそれほど付き合いにくい人ではないことを知っていた。そうでなければ、彼女のクールな雰囲気に、臆病な人は話しかける勇気すら出ないだろう。

「私の高校の同級生で、親友よ」水野日幸は答えた。

兄がイケメンで、女の子の注目を集め、誰かが追いかけたいと思うのは当然のことだった。この軍事訓練期間中、どれだけの女の子の心を虜にするかわからない!

大方笑子と江川薫は羨ましそうな表情を浮かべた。高校の同級生というのは素晴らしいと思った。彼女たちの高校時代は、光輝兄のことばかり見つめて、光輝兄との恋愛を夢見ていたのだ!

そして今日の午後に光輝兄の本人に会うまでは、いつかファンとアイドルの恋愛が実現するかもしれないと非現実的な妄想をしていた。しかし、本人に会ってみると、その差を身をもって感じ、自分を卑下するわけではないが、心の底から自分にはふさわしくないと感じた。

これからの日々は、厳しい軍事訓練が待っていた。9月の天気は最も暑い時期で、訓練場には木一本もなく、朝から晩まで日差しにさらされ、日焼け止めを塗っても強い日差しには勝てず、数日もしないうちに、男女関係なく、みんな一回り黒くなった。