第601章 彼は星明かりに包まれているようだった

黒田香も水野日幸がそんなことを言うとは思わなかった。彼女は幼い頃から裕福な生活を送り、甘やかされて育ち、どこに行っても大勢の人に持ち上げられ、誰も彼女に逆らう者などいなかった。そして彼女は常に水野日幸のことを快く思っていなかったため、冷笑して言った。「もし偽物だったら、学校中の人の前で私の前に跪いて、私の足の指を舐めることができる？」

自分を馬鹿にしているのか、それとも何も知らないと思っているのか。彼女は養顏丹のことを常に注意深く見守っており、少しでも動きがあれば必ず真っ先に知ることができるのだ。

「いいわよ」水野日幸は笑いながら続けた。「さらに条件を付け加えましょう。もし私の持っているものが本物なら、ここにいる全員に養顏丹3.0バージョンを一本ずつプレゼントすることにして。もし私が負けたら、私が全員に一本ずつプレゼントするわ」

黒田香は彼女がどこからそんな自信が出てくるのか分からず、ますます軽蔑の念を抱いた。「いいわ、承知したわ。あなたは前もってお金を用意しておいた方がいいわよ。もし買えないなら、自主的に退学して、私たちの帝京大学から出て行きなさい。恥さらしはやめてちょうだい」

水野日幸は笑って言った。「そこまで言うなら、あなたが負けた時も帝京大学から出て行くことね！」

江川薫と大方笑子は怒りと笑いが混ざった表情で黒田香を見つめた。彼女は頭がおかしいのか、寮のこの連中は皆頭がおかしいのか。入学する前に、クラスメートのことを少しも調べなかったのだろうか？

日幸は中森茜先生なのに、どうしてお金がないはずがあるし、偽物を使うはずがないじゃない？

でも彼女たちも、威張り散らして人を見下し、自惚れている黒田香のことが前から気に入らなかった。少し懲らしめられるのを見られるのは嬉しかった。

「今は軍事訓練期間だから、ここから出られないわ。だから訓練が終わったら、私の養顏丹を持って浅井家のチェーン薬局に行って、本物か偽物か確かめましょう！」と水野日幸は言った。

「その時になって逃げ出さないでよ」黒田香は軽蔑的に彼女を横目で見た。こんな人が使う化粧品はブランドのない雑貨で、どこから手に入れたのか知らないのに、よくも自分と張り合おうとする。