第613章 藤田清義の席ではなかった

江川歌見は藤田清義を叱りつけた後、ようやく藤田清義がまだ隣に座っていることに気づき、丁寧に彼に微笑みかけた。「申し訳ありません、藤田様。私の弟子が失礼いたしました」

藤田清義は彼女に軽く頷いただけで、何も言わなかった。

水野日幸は目の端で彼を見やり、藤田清義が気づいたかのように彼女の方を見返してきたのを見て、慌てて視線を逸らし、江川歌見を押しながら急がせた。「師匠、早く仕事に行ってください。母を疲れさせないでください」

江川歌見は彼女の頭を小突きたい衝動に駆られたが、多くのメディアがいたので、彼女の面子を保たなければならなかった。「思がいるでしょう!」

以前は弟子が弟子を取ったことが面倒だと思っていたが、最近になって、むしろ使い勝手が良いことに気づき始めた。何より言うことを聞くのが良かった。言われたことをきちんとやる。自分の弟子とは違って、弟子を取ったのに取っていないようなもので、師匠として享受すべきものを何一つ享受できていなかった。