第611章 一口で1個を食べる

帝都で一番賑やかな商店街。

水野日幸が長谷川深の車椅子を押して商店街に現れた時、通行人は皆振り返って二人を見つめずにはいられなかった。女性は天女のように美しく、男性は仙人のように端麗で、二人とも人間離れした美しさだった。

「お兄さま、ソフトクリーム食べる?」水野日幸は嬉しそうに少し離れたスイーツ店を指さした。「買ってきます。」

長谷川深は眉間にしわを寄せ、彼女に注意した。「君は食べちゃダメだよ。お腹を壊すから、向こうでミルクティーを買おう。」

水野日幸の顔が一瞬で赤くなった。彼女よりも彼の方が覚えているなんて。生理まであと数日だったから、前後数日冷たいものを食べると痛くなるはずだった。でも食べたくて、甘えるような口調で「一口だけ食べていい?」

長谷川深は可哀想そうな子供を見るように頷いた。「一口だけだよ。」

水野日幸は彼が許可を出したのを見て、すぐに走り出した。気が変わる前に急いで、すぐにソフトクリームを二つ持って戻ってきた。理由は筋が通っていた。「二個目が半額だったから、お得だから二つ買ったの。」

長谷川深はイヤホンを開けて呼びかけた。「葛生。」

葛生は二人のデートの邪魔にならない程度の距離を保ちながら、いつでも指示を受けられる位置で待機していた。大きな電球のような存在感を出さずに、呼ばれるとすぐに最速で近づいてきた。

長谷川深は水野日幸を見つめた。

水野日幸は躊躇なく葛生にソフトクリームを一つ渡し、もう一つを長谷川深に渡した。「これを持っていて、私が一口食べるから!」

葛生は手にしたソフトクリームを見て、自分は一体何なのかと思いながら、任務完了したような気分で姿を消した。

長谷川深はソフトクリームを持ち、目の前でしゃがむ少女に、自ら彼女の口元まで運んで食べさせた。容赦なく「一口だけ」と言った。

水野日幸は頷き、大きく口を開けて一口でアイスクリームをコーンの最後の部分だけ残して食べてしまい、逃げ出そうとした。

長谷川深は素早く手を伸ばして彼女の手首を掴んだ。少女はその場でぴょんぴょん跳ねながら、もごもごと寒さを訴えていた。

水野日幸は凍えそうだったが、暑い日だったのでアイスクリームを口に入れると涼しく感じた。吐き出すべきか飲み込むべきか迷っていた。