第610章 境界線を越えた方が犬

長谷川深は胸が高鳴り、可哀想な少女を見つめながら手を差し伸べて言った。「隣の部屋で寝なさい」

水野日幸の目が急に輝き、何度も頷いた。「うん」

長谷川深が彼女を引き上げると、飴も彼女の腕から飛び降り、彼の足元に跳んで、にゃーにゃーと鳴いていた。

水野日幸は飴を恨めしそうな目で見つめた。彼女も膝の上に座りたかった!

長谷川深は少女を家に連れて帰り、温かい牛乳を一杯飲ませ、リンゴを一つ食べさせてから、ふらふらと寝室に戻らせた。彼女がドアを閉めるのを見届けてから、車椅子を転がして自分の寝室へ向かった。

ちょうど電気を消したところで、ドアの前で足音が聞こえ、そこで止まった。そして少女の甘い声がドアの外から聞こえてきた。「お兄さん、寝た?」

水野日幸は声を小さくして、こっそりと。