第609章 あなたが恋しかった

出雲絹代は困り果てた様子で、事態がここまで明らかになった以上、言うべきことは言った。ずっと心に秘めておくわけにもいかない。「容姿は申し分ないわ」

「見た目がいいからって、それで食べていけるのか?うちの大切な娘が、一生障害者の面倒を見なければならないなんて、考えただけで胸が痛む。娘が可哀想で仕方がない」水野春智は言葉を詰まらせ、声が震えた。

「あなた、あなたの気持ちはわかるわ。でも焦らないで。娘にも何も言わないで。まだ若くて、初恋なのよ。あの子の頑固な性格はあなたもわかってるでしょう。急かしすぎたら、何か事故でも起こしかねないわ」出雲絹代はそれを心配していたからこそ、ずっと黙っていたのだ。

「そいつは誰だ?」水野春智は歯ぎしりしながら、台所へ包丁を取りに行った。「ぶっ殺してやる。うちの娘に手を出すなんて」