第618章 私の髪に誰も触れさせない

長谷川深は目を伏せ、飴を見つめながら、静かにするよう手で合図した。

水野日幸は耳が敏感で気づいた。「飴はどうしたの?」

長谷川深は笑って答えた。「あなたに会いたがってるよ」

そして、ビデオを飴の大きな頭に向けると、画面いっぱいに映り、飴は大きな口を開けて、水野日幸が見えているかどうかもわからないまま、ただニャーニャーと鳴いていた。

水野日幸は抗議した。「もう何も見えないわ」

長谷川深は優しく「うん」と返事をして、「もう寝る時間だよ、飴ママ」と言った。

水野日幸は初めて彼から飴ママと呼ばれ、耳まで赤くなった。「あなたも早く寝てね、飴パパ」

「おやすみ」長谷川深はカメラ越しの少女を見つめ、彼女の赤らんだ頬を見ながら、喉仏を動かした。見ることはできても触れることができない感覚は、本当に辛かった。