第619章 役者という言葉で恥をさらすな

「あなたには決定権がないのね!」川村染の目には明らかな怒りが宿っていた。周りの悪意のある人々に笑い者にされないよう、なんとか普通に振る舞おうと努めた。「じゃあ、決定権のある人を呼んでください。出雲七脚本家を呼んできて、私が髪を剃らなければ撮影できないと思う理由を聞いてやるわ!」

出雲七め、何度も彼女との通話を拒否し、対話を拒否して。今度こそ見てやるわ。撮影を拒否したところで、彼らに何ができるというの!

時間稼ぎですって?彼女には彼らと付き合う時間はいくらでもある。むしろ時間がないのは彼らの方で、ドラマの第一話は今週撮影して、来週には放送開始なのだから。

「川村先生、お待ちください。出雲七先生に確認してみます」古川政史は自分が箱の中に挟まれたネズミのような気分だった。両方から責められながら、へりくだらなければならない。

出雲七脚本家がどんな人物か、直接会ったことはないが、数少ない会話からでも分かる。非常に強気で、主張の強い人物で、一度決めたことは絶対に変えない。

川村染も手を出せない相手だ。それに、俳優が髪を剃りたくないと言うなら、どうすることもできない。縛り上げて無理やり剃るわけにもいかないだろう。

水野日幸は古川政史からの電話を受けた時、ちょうど演出室に着いたところだった。眉をひそめて「分かった。電話を彼女に代わってくれ。私から話す」

古川政史はここでようやくほっと胸をなでおろした。ああ、出雲七脚本家がここまで折れてくれるなんて珍しい。この半月の間、何度も電話をかけていたが、出雲七脚本家と直接話すことはなく、源社長の秘書の有田風を通じて、川村染の状況を説明し、出雲七脚本家に相談してもらっていた。

しかし最後は同じ答えで、とりあえず対応するように言われ、すべてを彼に押し付けられていた。

監督として、こういった事態の調整は確かに彼の仕事だ。しかし、この撮影現場は特殊な状況にある。監督も、俳優も、プロデューサーも、製作総指揮も、投資家も、全員が一人の意見に従わなければならない。出雲七脚本家の意見に。

川村染は電話を受け取った時も、その場を離れようとはしなかった。彼女の失態を見たがっているこれらの人々の前で、彼女と出雲七脚本家のどちらが強いのか、しっかりと見せつけてやるつもりだった。