第620章 髪を剃ったばかりなのに、かつらを付けろだって!

川村染は一瞬言葉に詰まった。大勢の人が見ている中で、自分のイメージを守らなければならなかったし、出雲七が撮影しないなら契約解除すると言い出すとは思ってもみなかった。

契約解除など怖くてできるはずがない。違約金はさておき、この件が大きくなれば、世論をコントロールして無傷で済むという保証もない。結局、損をするのは自分だけだ。

この出雲七め、本当に計算高い!

曽我若菜は傍らに立ち、彼女が携帯を握りしめる手の関節が白くなっているのを見つめながら、何も言わず、目の奥に暗い色を宿していた。心の中では焦りが出てきていた。

彼女は出雲七のことは好きではなかったが、内心では彼女の推進力と知名度を利用して、芸能界に派手に進出し、ブレイクしたいと思っていた。

今は誰であれ、自分の道を邪魔する者は目の上のたんこぶだった。たとえそれが幼い頃から育ててくれた、十数年間ママと呼んできた人であっても!