水野日幸はカップラーメンを手に取り、水を入れ、鍋のスイッチを入れると、椅子を引き寄せて、横に座って湯が沸くのを待った。
長谷川深は彼女の後ろに立ち、目を伏せながら、彼女の一挙手一投足を楽しげに見つめていた。彼女が何をしても心が和み、唇の端がますます上がっていった。
「座っていてよ」水野日幸は彼の服の裾を引っ張り、後ろのソファを指さした。
彼の足はやっと良くなったばかりなのに、あれこれするのは良くない。足はゆっくりと回復させなければならず、こんなに急いではいけない。良くなったばかりなのに、歩きすぎてしまう。
「大丈夫だよ」長谷川深は彼女を笑顔で見つめ、指で彼女の鼻先を軽くつついて言った。「お湯が沸いたよ」
今の彼は、ただ立っていたかった。もうどれほど長くこの感覚を味わっていなかっただろう。かつては、一生車椅子に座ったままで終わると思っていた。まさか再び立ち上がれる機会が来るとは思わなかった。
水野日幸が振り返ると、確かにお湯が沸いていた。急いでカップラーメンを開け、麺を取り出してお湯に入れた。最近、彼女のラーメンを作る腕前は上がってきていた。
ドアをノックする音がして、長谷川深は立ち上がろうとする少女の肩を押さえた。「葛生に卵と青菜を持ってきてもらったから、僕が開けるよ」
水野日幸もドアを開けようとは争わず、ただ顎を支えて、男性の長い脚をぼんやりと見つめていた。見ているうちに、目が赤くなり、口元が緩んで笑みがこぼれた。
お兄さんの足がついに良くなった。彼女の心に重くのしかかっていた大きな石が、やっと取れた気がした。自分の醫術が足りず、彼の足を治せないのではないかと、いつも怖かった。
半月前に作った薬について、正直に言えば、彼女も百パーセントの自信があったわけではなかった。失敗を恐れてはいなかった。何度でも、何度でも試すことはできた。
でも、お兄さんが失望するのが怖かった。一度の失望が、彼にとってはとても大きな打撃になる。彼が辛い思いをするのを見るのが、一番嫌だった。
長谷川深は物を持って戻ってきて、少女が再び目を赤くしているのを見て、胸が締め付けられた。彼女の前にゆっくりと、少し苦労しながら屈み、長く白い指で彼女の目を優しく覆い、柔らかく言った。「ゆで卵で冷やそうか」