第633章 自ら門を叩き、正式に婚約を申し込む

少女は寝返りを打って背中を向けると、動かず、話もせず、彼は彼女を見つめながら、外に出ている彼女のふわふわした頭を優しく撫でて「おやすみ」と言った。

水野日幸は抗議した。「向こう側がいい」

長谷川深は布団をかけながら、優しい笑みを浮かべて言った。「自分で寝返りを打てばいいじゃないか?それぐらいできるだろう?」

水野日幸は「できない、今は手が使えないの」と言った。

長谷川深は笑って、手伝おうとはせず、ただ「おやすみ」と繰り返した。

水野日幸は背後から男性の落ち着いた呼吸音が聞こえ、彼の体から漂う柔らかなボディーソープの香り―彼女が買ったバラの香りのするもの―が心地よく、彼女の心を揺さぶった。

外では風が吹き、窓に雪が当たる音が聞こえるようだったが、部屋の中は暖かく静かで、居心地が良かった。

しばらくして、彼女はそっと寝返りを打ち、目を開けて目の前の男性を見つめた。カーテンが完全には閉まっておらず、隙間から光が差し込んで、彼の今の姿がはっきりと見えた。

「お兄さん」水野日幸は小さな声で呼びかけ、「寝た?」と尋ねた。

長谷川深は何も言わず、呼吸は穏やかだった。

水野日幸は指を伸ばし、彼の布団を軽く突いて、小さな声で「お兄さん、寒い」と言った。

長谷川深の羽のように長い睫毛が動き、目を開けて小さく丸まった少女を見つめ、無意識に手を伸ばして彼女の額に触れ、眉をしかめて「体温計はある?」と聞いた。

水野日幸は首を振って「熱があるの?」と聞いた。

長谷川深は近づいて、顎を彼女の額に当て、もう一度温度を確かめて、うなずいてから布団をめくり、横から携帯を取り出した。「微熱だ。葛生に薬を持ってきてもらおう」

しかし水野日幸は彼を引き止め、今や少し曇っているものの、星のように輝く大きな目で「薬はあるわ、出雲さんがたくさん持たせてくれたの」と言った。

真夜中に葛生を呼び出すのは申し訳ない。きっと陰で文句を言われるに違いない。

長谷川深は薬の場所を聞くと、すぐに漢方薬を小さな椀に溶かし、蜂蜜水と一緒に持ってきた。まず薬を飲ませ、次に温かい蜂蜜水を飲ませてから、手の甲を再び彼女の額に当て、落ち着いた声で「布団をしっかりかけて、汗をかけば良くなる」と言った。

水野日幸は彼を見て笑い、かすれた声で、鼻声混じりに「お兄さん、医者はわたしの方よ」と注意した。