第650章 兄が日本へ行った

長谷川深は少女と視線を交わし、互いに微笑み合って、真剣に未来の義父との将棋を続けた。

水野春智は感じていた。彼は将棋が得意ではなく、少なくとも熟練していない。昨日はまだ初心者で、ずっと負け続けていたが、一局ごとに上手くなり、今では互角の勝負ができるようになっていた。まさに好敵手と言えるだろう。

彼はこのような向上心のある若者を最も評価していた。しかし、目の前のこの若者は本当に賢すぎる。普通の人なら進歩があっても、これほどまでには上達しない。この種の人間は天才で、何をしても成功できるのだ。

ソファーでは、藤田清明、辻緒羽、大豆田秋白の三人が、キラキラ☆ガールズの最新のバラエティを見ながら、時々会話を交わしていた。

藤田清明の携帯が鳴り、電話に出て外に出ながら言った。「二兄さん」

「兄さんが今さっき家に戻って、荷物をまとめて日本に向かったよ」藤田清輝は最新の情報を伝えた。「出発する時、特にお前のことを気にかけていたから、気をつけろよ」

兄が出発する時、表情は深刻で、周りに暗雲が立ち込めているようだった。誰かが不運な目に遭うことは明らかだった。

「分かりました」藤田清明は返事をし、慎重に心配そうに言った。「両親は既に兄さんと話をして、私たちと日幸との付き合いに干渉しないように言ったはずですが、まさか私を探しに来るんじゃないですよね!」

「分からない」藤田清輝は兄が出発する時の全身から漂う冷気を思い出し、思わず身震いした。「とにかく気をつけろよ」

「航路は閉鎖されているんじゃないですか?」藤田清明は思わず体を縮こませた。

「航路を開通させて、プライベートジェットで行くって。運命に任せるって言ってた」藤田清輝はため息をつき、声に心配が滲んでいた。

誰が止めても無駄だった。両親も話をして、今は行かないようにと言ったのに。外は大雪で航路も閉鎖されている。もし何かあったらどうするのか?

しかし、どれほど急いで処理しなければならない事があるのか分からないが、この時期に日本に行かなければならず、自身の安全も顧みない。心を決めているのだ、誰も止められない。

「じゃあ、私を探しに来たわけではないでしょう」藤田清明はほっとして、自分がそこまで重要ではなく、兄が命の危険を冒してまで自分を叱りに来るほどの価値はないと感じた。