第696章 何でも食べるけど、特に死んだネズミが好き

二人は『国民アイドル』を見ながら話をしていた。基本的には一橋渓吾が話し、藤田清義が時々質問を投げかける程度で、言い表せないほど和やかな雰囲気だった。

キッチンでは手伝えることもあまりなく、水野日幸と石田文乃はすぐに長谷川深と水野春智に追い出されてしまった。

水野日幸はぐずぐずと、石田文乃の後ろを歩きながら、手にニンジンを持って、歩きながら齧っていた。

石田文乃は先に走り、好奇心いっぱいの表情で一橋渓吾に尋ねた。「どうして『国民アイドル』を見ることになったの?」

一橋渓吾は微笑んで、少し考えてから答えた。「藤田兄が夕子先生を高く評価しているんです。」

石田文乃は彼女のことを見ていると思っていたのに、意外な答えに、より一層嬉しそうに笑い、藤田清義の方を向いて言った。「藤田兄は夕子先生が好きなんですね、私も好きです!」

藤田清義は頷き、視線を水野日幸に向け、彼女の目を見つめながら笑って言った。「ええ、とても好きです。」

彼女はよく隠していたものだ。彼女の両親も、兄の友人たちも、彼女が夕子先生だとは知らない。そうなると、彼は彼女の小さな秘密を知る特別な存在となるのだろうか?

水野日幸は一口のニンジンを飲み込んで、藤田清義の突然の視線にむせそうになりながらも、何事もないかのように彼に微笑みかけ、石田文乃の隣の席に座った。

一橋渓吾は生来敏感で、藤田清義の眼差しを見て、少し気になった。

石田文乃はいつも通り大らかで、興奮して藤田清義に夕子先生のことを話し始めた。みんなが共通のアイドルを持っているのだから、当然しっかり共有しなければならない。

そのとき、飴がどこからともなく戻ってきて、全身雪まみれのまま水野日幸に飛びかかろうとした。

水野日幸は身を引きながら、飴を指差して言った。「あっち行け、近寄るな。暖房の上で乾かしてから来なさい。」

飴は彼女にそう怒鳴られ、おずおずと足を止め、可哀想そうにニャーンと二回鳴いた。これ以上ないほど哀れな様子だった。

「かわいそうに、おばさんのところにおいで。おばさんは嫌がったりしないわよ。」石田文乃は可愛がりたい気持ちと同情心で飴に指を曲げて誘った。

「飴?」藤田清義はすぐに目の前の猫の正体を察し、眉間にしわを寄せた。まだ反応する間もなく、全身雪まみれで毛も濡れた小さな生き物が、サッと自分の方に走ってきた。