第31章 正式に撮影現場入り（3）

話しかけてきたのは女性の声で、澄んで心地よい声だった。

鈴木和香は思わず振り向くと、林夏音が自分の隣に立ち、優雅な笑顔で我孫子プロデューサーと握手をしているのが見えた。

我孫子プロデューサー：「夏音さん、久しぶりの共演ですね。」

林夏音：「今回も我孫子さんとの仕事、よろしくお願いします。」

林夏音が我孫子プロデューサーと挨拶を交わす合間に、馬場萌子は突然何かを思い出したかのように、鈴木和香の耳元に近づいて小声で言った：「和香、林夏音は元々このドラマの女二号だったのよ。でもあなたが突然割り込んできたせいで、彼女は女三号になっちゃったの。あの女、昔から恨みを持つタイプで、特に演出家やプロデューサーの前では誰とでも仲良くしているふりをするのが得意なの。気をつけた方がいいわよ……」

馬場萌子の言葉が終わらないうちに、林夏音が突然振り向いた。馬場萌子はすぐに口を閉じ、林夏音に友好的な笑顔を向けた。林夏音も同じように微笑みを浮かべながら、しかし言葉は鈴木和香に向けられていた：「和香さん、お久しぶりですね。」

林夏音について、鈴木和香は知っていた。環映メディアでここ数年で最も急成長している契約女優だ。同じ事務所に所属しているとはいえ、鈴木和香は林夏音と接点がなかった。それに、たとえ接点があったとしても、林夏音のような高慢な性格の持ち主が、鈴木和香なんかと話をする気になるはずがない。

だから今、林夏音が親しげに「和香さん」と呼びかけ、まるで親しい友人であるかのような表情で接してくるのを見て、鈴木和香は心の中でドキリとした。そして馬場萌子が先ほど言った言葉を思い出し、すぐに理解した。自分の名前を覚えているということは、きっと自分が彼女の役を奪ったことを知っているのだろう。今頃は心の中で自分のことを憎んでいるに違いない。それなのにわざわざ親しげで友好的なふりをする必要があるなんて、さぞ大変なことだろう。

彼女が演技をするなら、自分も演技で返そう。結局のところ、誰もプロデューサーの前で度量の小さい印象を与えたくはないのだから。

鈴木和香は即座に笑顔を作り、まるで本当に林夏音と親友であるかのように、親しげな口調で言った：「夏音姉、久しぶりですね。ますます綺麗になりましたね。」