鈴木和香も思わず興味を引かれた。
脚本では、女二号と男二号は対立する役どころだが、今まで彼女は自分の相手役が誰なのかまったく知らなかった……
プロデューサーは皆が非常に興味を持っている様子を見て、神秘的な表情で答えを明かそうとした矢先、個室のドアが再び開かれた。プロデューサーは反射的に振り向いて一瞥したところ、言葉が喉に詰まり、すぐさま立ち上がった。
プロデューサーの行動に続いて、テーブルを囲む全員が入口の方を振り向いた。
我孫子プロデューサーは熱心に笑顔で挨拶した。「来栖社長、ようやくいらっしゃいましたね。どうぞお座りください。」
鈴木和香も他の人と同様に入口の方を向いたが、振り向きかけたところで我孫子プロデューサーの口から「来栖社長」という言葉を聞き、心臓が大きく跳ねた。「来栖社長」が誰なのか理解する間もなく、来栖季雄が落ち着いた足取りで入ってくるのが見えた。