第46章 初めて出会った時を思い出して（2）

鈴木和香は来栖季雄が一体何をしようとしているのか分からなかったが、男性の体の圧迫を感じた時、本能的に強く目を閉じた。

来栖季雄は眉目に冷たさを漂わせ、頭を少し下げたまま、鈴木和香をじっと見つめ、ただ彼女の体を強く押さえつけるだけで、それ以上の動きは見せなかった。

鈴木和香は全身びしょ濡れで、来栖季雄も例外ではなく、服からも水が滴り落ちていた。

浴室には、来栖季雄が無造作に浴槽に投げ入れたシャワーヘッドからの水が流れる音だけが響いていた。

それ以外の音は、もう何も聞こえなかった。

この静寂と膠着状態に、鈴木和香の心は一層不安になっていったが、目を開けて確かめる勇気もなく、最後には寒さか緊張のせいか、肩が思わず小さく震えた。

そのような些細な動きも、来栖季雄の目には明確に映り、彼は眉間を少し寄せると、突然頭を下げ、我孫子プロデューサーが触れた和香の肩を強く噛みついた。

彼は非常に強く、いくらか残虐なほどに噛みつき、鋭い痛みが和香の肩から全身の神経に走った。和香は反射的に手を伸ばして男性を押しのけようとしたが、その動きに来栖季雄は更に強く噛みつき、和香は痛みで全身が震え始め、肩から粘っこい液体が流れ出るのを感じた。しかし、男性は止める気配を見せず、和香は痛みに耐えきれず、突然涙が「ぽつり」と落ち、来栖季雄の首筋に落ちた。

温かい液体が季雄の首筋を伝い、左胸へとゆっくりと流れていった。彼は全身を硬直させ、和香の肩を噛む力を突然緩めたが、唇はまだ彼女の肩に触れたままだった。

しばらくして、また一粒の涙が彼の首筋に落ちると、来栖季雄は全身を大きく震わせ、突然顔を上げて和香の唇を塞いだ。彼のキスは荒々しく、血の味が混じっていた。

彼と彼女は二度肌を重ねたことがあり、目覚めた後どれほど彼女に怒りを感じていても、その二度は優しかった。それが彼の本意ではなかったとしても。

しかし今回は違った。彼は激しく、重く、まるで所有するかのように、また拷問するかのように、彼女が自分自身ではないように感じるほどの痛みを与えた。