第40章 自分に面倒を招くのが怖い(4)

『傾城の恋』の最初の二日間は鈴木和香のシーンがなかったが、彼女は毎日撮影時間通りに現場に来て様子を見ていた。

撮影初日は来栖季雄のシーンもなく、彼は全く姿を見せなかった。二日目の午後に彼のシーンが一つあり、午前十時に彼は撮影現場に到着した。すぐにメイクに向かうことなく、椅子を見つけて座り、撮影中のシーンを見ていた。

おそらく来栖季雄が現れたせいで、今日シーンのない俳優たちも集まってきたが、季雄の冷たいオーラのせいで、話しかけるどころか、彼の周囲三メートル以内には誰も近づかなかった。

昼食時、スタッフ全員が弁当を食べ、来栖季雄も例外ではなかった。アシスタントが持ってきた弁当を、少しも嫌な顔をせずに受け取り、静かに食べ始めた。

彼の食事の仕草は優雅で、全身から気品が漂っていた。食事を終えると、そのままメイクルームに入った。