鈴木和香は知っていた。松本雫の誕生日パーティーには来栖季雄が来るはずだから、来栖季雄と顔を合わせないように、和香は当然行きたくなかった。
でも松本雫が特別に知らせてくれたので、行かないにしても直接断りを入れなければならず、和香は馬場萌子に先日買ったタグ付きのシャネルのバッグを包装してもらい、自らそれを持って最上階へ向かった。
松本雫の部屋は1005号室で、ドアを開けたのは松本雫だった。和香を見ると、口元を緩ませて微笑み、体を横によけながら言った。「君、どうぞお入りください」
「結構です」和香も微笑んで、手に持っていたバッグを差し出した。「急だったので、プレゼントの用意ができませんでした。これを贈らせていただきます」
松本雫は外側の表示を一目見て、値段が高いことを知っていたが、遠慮することなく、さっぱりと受け取った。「ありがとう」