第113章 言えない秘密(7)

鈴木和香は考えれば考えるほど胸が痛くなり、目に涙が浮かんできた。来栖季雄の前で突然泣き出してしまうのが怖くて、ずっと俯いたまま、心の中で渦巻く感情を必死に抑えていた。車が突然止まり、顔を上げると、窓越しに桜花苑別荘の正門が見えた。鈴木和香は躊躇することなく手を伸ばし、ドアを開けて車を降りた。

彼女の動きは来栖季雄が反応する間もないほど素早く、車が停まった瞬間には既に降りてしまっていた。

来栖季雄は眉間にしわを寄せた。車を彼女の前に停めた時、乗車を促しても彼女がその場で固まっていたことを思い出した。それなのに桜花苑に着くや否や、こんなにも急いで車を降りる。

来栖季雄は唇を固く結び、瞳に浮かぶ失望を隠すように目を伏せた。車を発進させようとした時、助手席に鈴木和香のバッグが置き忘れられているのに気付いた。少し躊躇した後、手を伸ばしてクラクションを鳴らした。