第119章 芝居の内と外(5)

あの時以来、椎名佳樹は集まりを開くたびに、忙しい中時間を作って来ていたが、彼女に会う機会は次第に減っていった。たまに出くわしても、彼女は彼とほとんど言葉を交わさなくなった。

実は、五年以上前に、彼女の深い愛を愛せない深い愛に変えてしまったあの出来事と比べて、彼女が彼の世界から徐々に遠ざかっていくことの方が、より一層彼を生きる気力を失わせた。

来栖季雄は鈴木和香の瞳を見つめていた。そこには多くの感情が絡み合っていた。痛み、いたわり、悲しみ、熱情、諦め……そのすべてが最後には哀愁へと変わっていった。

実際、彼女が見ていない時だけ、彼は自分の感情をこれほど素直に表すことができた。

表面上は何でもないふりをしているが、実は心の底では常に気にかけていた。

来栖季雄はそこまで考えて、思わず深いため息をつき、我に返った。彼はゆっくりと身を屈め、彼女のこめかみに軽くキスをした。眠っている彼女に「愛している」と言いたかったが、喉が二度上下するだけで、結局何も言えずに、ゆっくりと立ち上がって立ち去った。

ある種の愛は、どうしても口に出せない。

口にすれば、失うことになるから。

彼にとって、もう失うものは何もないほど失ってきた。だから必死に今の状況を維持するしかなかった。

今の状況が、既に最悪だとしても。

口には好きと言いながら、心の中では深く愛している。

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翌日、千代田おばさんは起床し、寝室から出て朝食の準備をしようとした時、ドアを開けるとちょうど来栖季雄が階段を降りてくるところだった。

千代田おばさんは来栖社長が昨夜一体何時に帰ってきたのか不思議に思い、一瞬戸惑った後、挨拶をした。「おはようございます、社長。」

来栖季雄は何も言わず、ただ頷いただけで、玄関に向かった。靴を履き替え、車のキーを取る時、来栖季雄は千代田おばさんに一言残した。「奥様には私が戻ってきたことは言わないでください。」

そして千代田おばさんが反応する間もなく、ドアを開けて出て行った。

千代田おばさんが我に返った時には、来栖季雄の車が去っていく音がかすかに聞こえるだけだった。

千代田おばさんはその場に立ち尽くし、首を傾げながら困惑した。社長は明らかに奥様のことを気にかけているのに、なぜそれを隠そうとするのだろうか。

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