あの時以来、椎名佳樹は集まりを開くたびに、忙しい中時間を作って来ていたが、彼女に会う機会は次第に減っていった。たまに出くわしても、彼女は彼とほとんど言葉を交わさなくなった。
実は、五年以上前に、彼女の深い愛を愛せない深い愛に変えてしまったあの出来事と比べて、彼女が彼の世界から徐々に遠ざかっていくことの方が、より一層彼を生きる気力を失わせた。
来栖季雄は鈴木和香の瞳を見つめていた。そこには多くの感情が絡み合っていた。痛み、いたわり、悲しみ、熱情、諦め……そのすべてが最後には哀愁へと変わっていった。
実際、彼女が見ていない時だけ、彼は自分の感情をこれほど素直に表すことができた。
表面上は何でもないふりをしているが、実は心の底では常に気にかけていた。
来栖季雄はそこまで考えて、思わず深いため息をつき、我に返った。彼はゆっくりと身を屈め、彼女のこめかみに軽くキスをした。眠っている彼女に「愛している」と言いたかったが、喉が二度上下するだけで、結局何も言えずに、ゆっくりと立ち上がって立ち去った。