第127章 軽率な発言はしないで(1)

鈴木和香はそう思っていても、心の中には深い失望感が残っていた。夜遅くまで何度もNGを出してしまい、疲れていたこともあって、メイクを落とす時は元気がなかった。ホテルの部屋に戻ると、シャワーを浴びてすぐにベッドに潜り込んだ。

鈴木和香は携帯を手に取り、習慣的にアラームをセットしようとしたが、明日は来栖季雄との撮影がないことを思い出し、マナーモードに切り替えてベッドサイドテーブルに置いた。

鈴木和香はぐっすりと眠れなかった。夜の撮影で来栖季雄から受けた印象が強すぎたせいか、夢を見てしまった。夢の中で彼は美しい告白の言葉を語りかけてきた。感動と喜びで頬を赤らめながら、長年心の中に秘めていた想いをゆっくりと打ち明けた。「季雄、知ってる?私、十三年もあなたのことが好きだったの...」

そう言い終わると、鈴木和香は無意識に来栖季雄を抱きしめようとしたが、空を掴んでしまい、目が覚めた。部屋の明かりは馬場萌子によって消されており、真っ暗だった。隣のベッドでは馬場萌子が深い眠りについており、かすかないびきを立てていた。しかし和香は全く眠気がなく、目を開けたまま暗闇を見つめながら、撮影中に季雄が向けてきた温かな眼差しと、メイクルームですれ違った時の冷淡な視線が交互に脳裏に浮かんでは消えていった。

再び眠りについたのが何時だったのか、和香にはわからなかった。ただ、窓の外はうっすらと明るくなり始めていた。

昨夜は早めに就寝したものの、夜中に長時間目が覚めていたため、翌日は十時まで眠り続けていた。

馬場萌子はすでに部屋にいなかった。鈴木和香はベッドで少しぐずぐずしていたが、起き出して身支度をしようとした時、突然携帯が振動した。

和香は横を向いて画面を確認すると、鈴木夏美からの着信だった。すぐに電話に出て、「お姉ちゃん」と呼びかけた。

「起きた?あと15分くらいであなたの泊まってるホテルの前に着くわ。準備して、時間通りに降りてきてね」何年経っても夏美の性格は変わらず、話し始めるといつも手短に要点を述べ、和香が返事をする前に電話を切ってしまった。

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鈴木和香は身支度を最速で済ませたものの、それでも5分遅れてしまった。

ホテルの玄関を出ると、鈴木夏美が不機嫌そうな顔で自分の車の前に立ち、電話をかけようと携帯を手にしているところだった。