あの時、彼女は来栖季雄が自分の人生における唯一の失敗だと思っていた。
むしろ、その失敗さえも受け入れていた。
約4年前、パーティーで来栖季雄と出会った時から、季雄は何気なく彼女と言葉を交わすようになった。
彼女は来栖季雄を長年知っているが、完全に理解しているとは言えないものの、かなり彼のことを分かっているつもりだった。彼が女性に自ら話しかけることなど一度もなかったのだ。
最初は気のせいだと思っていたが、一度、二度、三度と...4年経った今でも、季雄は彼女に自ら話しかけてくる...そして彼女は、もしかして季雄は自分に気があるのではないかと考え始めた。
正直に言えば、若かった頃、彼を追いかけたのは、彼のあの顔に完全に魅了されていたからだった。多くの美しく整った顔を見てきたが、来栖季雄のような一目で心を奪われるような顔立ちは見たことがなかった。だから、まるで魔法にかかったように、季雄を自分の彼氏にしたいと思った。
あの時の気持ちを表現すると、世界限定版のバッグを見つけたような感じだった。手に入れたい、注目を集めたい、羨望の的になりたい、そんな気持ちだった。
だから、来栖季雄のような彼氏を連れて歩けば、絶対に面目が立つと思っていた。
季雄が自分に気があるのではないかと思い始めた時、すでに諦めていた彼への気持ちが再び目覚め始めた。
しかも、今の季雄は6年連続で影帝を獲得し、環映メディアのCEOであり、すべての女性の憧れる国民的夫だった。
しかし、これらすべては彼女の思い込みに過ぎず、季雄は彼女に全く興味がなかった。
この男性に二度も振られ、幼い頃から望むものは何でも手に入れてきた鈴木夏美は、本当に納得がいかず、悔しかった。
彼女は知りたかった。一体どんな女性が来栖季雄をここまで夢中にさせ、その女性のために10年以上も変わらぬ気持ちで守り続けているのか。
夏美は車から降りようとしている季雄を見つめながら、抑えきれずに口走った。「季雄さん、あなたの好きな女性って、一体誰なの?」
来栖季雄は自分の態度を明確にし、鈴木夏美とこれ以上関わるつもりは全くなかった。彼が手を伸ばしてドアを開けようとした時、後ろから夏美が突然尋ねた。「季雄さん、あなたの好きな女性って、一体誰なの?」