鈴木夏美は車の中に座り、バックミラーを通して、来栖季雄の遠ざかっていく姿を見つめながら、ついに目が赤くなってしまった。
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エレベーターが最上階に到着し、ドアが開くと、来栖季雄が中から出てきた。
秘書が数枚の書類を抱えながら、彼の部屋の前で待っていた。彼が近づいてくるのを見ると、すぐに丁重に迎え出て、「来栖社長、お昼頃、会社の副社長が書類を届けさせました。緊急の書類だそうで、ご確認の上、問題なければ早急にご署名いただき、会社へ返送するようにとのことです。」と言った。
来栖季雄は軽く頷き、カードキーを取り出してドアを開け、スーツの上着を脱いで秘書に渡し、彼から書類を受け取ると、ソファに座って審査を始めた。
書類は七、八枚あり、来栖季雄がすべてに目を通して署名を済ませると、窓の外はすでに暗くなっていた。