鈴木夏美も深く考えずに彼に言った。「和香が風邪を引いて、体調が悪くて動きたくないの」
彼は落ち着いた様子で鈴木夏美に頷いた。一見無関心そうに見えたが、心の中では密かに苦しんでいた。
あの頃の鈴木和香は、彼にとって愛してはいけない深い愛情の対象だった。心配していても、彼女を見舞ったり気遣ったりする理由も資格もなく、結局、深夜になって人々が寝静まった時に、一人で車を走らせ、鈴木家の前で夜明けまで佇むしかなかった。
鈴木和香は、彼の人生において手に入れられないと分かっていながら、決して諦められない想いだった。
たとえその時、彼女と彼の間には何の接点もなかったが、それでも彼は彼女の暮らしぶりを知りたかった。
そのため、鈴木夏美との最初の会話を皮切りに、二度目、三度目と続き...気づけば四年以上が経過していた。椎名佳樹の母親である赤嶺絹代が自分を訪ねてきて、椎名佳樹と鈴木和香の夫婦を演じることになるまでは...それ以降、鈴木夏美との会話は減っていった。