第139章 君も雨の日が好き?(3)

来栖季雄はようやく視線を横のテーブルに移し、そこに確かに夜食の箱が置いてあるのを見て、眉間を少しだけ寄せ、瞳の色が一瞬深くなった。

鈴木和香は来栖季雄が夜食の箱をずっと見つめているのに、食べる様子を見せないのを見て、食べたくないのだと思い、少し迷った後でまた口を開いた。「秘書さんが、午後ずっと会社の書類で忙しかったから、きっと疲れているはずだって。何も食べないで、明日の朝まで持つわけないでしょう?」

来栖季雄はまだ何も言わず、視線を再び鈴木和香に向けた。

鈴木和香は手に抱えている書類をきつく握りしめ、自信なさげにまた話し始めた。「それに、食欲がなくても、少しは食べないと。少しでも食べた方が、何も食べないよりはいいわ……」

鈴木和香はそこまで言って、完全に自信を失ってしまった。

彼女と来栖季雄は「夫婦関係」という一層を除けば、他人同然だった。しかも新婚初夜に、彼女から気を利かせて、彼の生活に干渉しないと言い、彼もそれに全く反対せず「言った言葉は忘れないようにな」と言い残しただけだった。だから結婚後、彼女は彼の衣食住や予定について一切尋ねたことがなく、簡単な気遣いの言葉やおやすみの挨拶さえしたことがなかった。今このように執拗に食事を勧めることは、あの時の約束に反することになるのではないか……

鈴木和香は考えれば考えるほど不安になり、最後の言葉は小さく弱々しくなっていた。「それに、いつも食事を抜くのは胃によくないわ。」

来栖季雄はまだ何も言わず、じっと鈴木和香を見つめ続けていた。

鈴木和香が諦めかけ、来栖季雄は夜食を食べないだろうと思った時、男は突然歩み寄ってソファに座り、彼女が持ってきた夜食の箱を指さして、淡々とした口調で尋ねた。「何を持ってきた?」

鈴木和香は驚いて来栖季雄を見つめ、一瞬彼の言葉の意味が理解できなかった。

来栖季雄は彼女のこのような自分の言葉についていけない呆然とした様子に、気分が良くなったようで、気づきにくい微笑みを浮かべ、相変わらず平静な声で感情を込めずに言った。「俺に食べさせるために持ってきたんじゃないのか?」