第140章 君も雨の日が好き?(4)

鈴木和香は料理を来栖季雄の前に並べ、使い捨ての箸を取り出して開封し、彼に渡しながら言った。「何がお好きかわからなかったので、適当に注文してしまって……」

鈴木和香は話しながら、来栖季雄の方を見た。

来栖季雄はまっすぐな眼差しで、彼女を見つめていた。

二人の視線が交差した。

鈴木和香は心臓が跳ね、言葉が途切れ、大きな瞳を見開いたまま、少し顔を上げて来栖季雄を見返した。

来栖季雄の眼差しは、以前のような冷たさを帯びた無関心さではなかったが、特別な感情も見られず、ただ深く、その中で光が揺らめいているようだった。

鈴木和香は見つめ続けるうちに、心拍が不思議と速くなり始め、顔も次第に赤くなってきた。頬が熱くなるのを感じて、やっと我に返り、慌てて来栖季雄の顔から視線を外し、少し慌てた様子で手の中の箸を前に差し出した。「箸です。」

来栖季雄は鈴木和香の声を聞いて、ようやく我に返った。彼は瞬きをして、目の輝きはいつもの冷淡で疎遠な様子に戻り、そして黙って箸を受け取り、目を伏せたまま、ゆっくりと食べ始めた。

来栖季雄の食事の動作は優雅で、音一つ立てなかった。

部屋の中は静かだった。

鈴木和香は来栖季雄の向かいでしばらく座り込み、先ほどの視線が合った時の動揺した心拍が落ち着くのを待ってから、そっと目を上げて目の前の男性を盗み見た。

和香は何度も見てみたが、季雄の注意は常に食事に向けられていたので、思い切って、こっそりと彼を観察し始めた。

彼は昼食時と同じ服装だったが、スーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外し、シャツの襟元のボタンを二つ外して美しい鎖骨を見せ、袖をまくって逞しい腕を少し覗かせていた。それによって、彼の上品な雰囲気にちょっとした気取りのなさが加わっていた。

彼は食事に集中している表情で、長い睫毛が時々かすかに揺れていた。

初めて彼を見た時、彼のような容姿に心を奪われ、十三年経った今でも、夜な夜な彼の夢を見続けているが、それでも彼を見つめるたびに、その美しさに心を打たれる。

彼女は思った。おそらくこの世界で、彼のような人は一人だけで、いくら見ても飽きることがなく、非の打ち所がないのだろうと。