第153章 私の質問に答えて(5)

来栖季雄は鈴木和香の声を聞いて、怒りのあまり理性を失い、彼女に電話をかけてしまったことに気づいた。

思わず「元気?」と聞きそうになったほどだった。

五年前のあの出来事以来、彼には彼女を気遣う資格はなくなった。愛することができないのなら、最初から愛していないように見せかけた方がいいと思った。

この数年間、彼は何度も彼女に近づきたいと思ったが、同時に自分を抑えて彼女に会いに行かないようにした。自制が効かなくなることを恐れたからだ。結婚後、彼が家に帰らなかったのは、長く一緒にいると作り上げた冷たい態度が崩れてしまうことを恐れたからだ。しかし、そんな状態でも、彼女の気分が良くないかもしれないと知ると、やはり抑えが効かなくなってしまう。

来栖季雄は携帯を握りしめ、しばらく沈黙した後、やっと動揺した心を落ち着かせ、できるだけ平静で冷静な声で話し始めた。「SNSのニュースを見たんだが……」

やはり彼と彼女の噂についての電話だった……鈴木和香は目を伏せたまましばらく黙っていたが、やがて口を開いた。「昨日は私が不注意で、写真を撮られてしまって、あなたに迷惑をかけてしまいました。」

実は彼は彼女を責めるつもりはなかった。なぜ写真を撮られたのかを問い詰めるつもりもなかった。それどころか、彼女と噂になることは全く気にならなかった。むしろ、少し嬉しかった……来栖季雄は口を開きかけたが、何と言えばいいのか分からず、手で髪を乱暴に掻き混ぜると、話題を変えた。「昨夜、君が欲しがっていた……」

来栖季雄はたった六文字話しただけで、自分が選んだ話題がいかに不適切かに気づいた。イライラと手を上げてワイシャツの襟元を緩め、深いため息を二度つくと、そのまま電話を切った。

鈴木和香は電話から聞こえる「ツーツーツー」という話中音を聞きながら、ゆっくりと瞬きをして、来栖季雄が言いかけた言葉「昨夜、君が欲しがっていた……」について考えた。昨夜、彼女が何か欲しがっていたことについて聞こうとしていたのだろう。

和香は物憂げな表情で窓の外を一分ほど見つめた後、深く息を吸い、振り返って後ろにいる馬場萌子に尋ねた。「最近、林夏音に良い仕事の話はある?」

馬場萌子はしばらく考えてから、鈴木和香に答えた。「最近人気のバラエティ番組で、ゲストとして呼ばれる予定があるみたいです。」