第148章 君も雨の日が好き?(12)

鈴木和香は最初気にしていなかったが、食事の途中で、レストランの中に多くの俳優やスタッフがいて、時々自分を指差し、そして振り向いて同伴者と何かをひそひそ話しているのに気づいた。

鈴木和香は何度もそれに気づき、胸に不安が込み上げてきた。思わず箸を置き、顔を上げて、目の前の馬場萌子に尋ねた。「撮影現場で何かあったの?」

馬場萌子は困惑した表情で鈴木和香に首を振り、口の中に食べ物があったため、やや不明瞭な声で「聞いてないよ」と答えた。

その後、馬場萌子は口の中の食べ物を飲み込んで、「どうしたの?」と再び尋ねた。

ちょうどそのとき、また誰かが箸で鈴木和香を指差し、鈴木和香に見つかると慌てて体を正面に向け直した。鈴木和香は綺麗な眉間にしわを寄せ、撮影現場で自分に関する何かが起きたことを確信し、目の前の馬場萌子に静かに言い付けた。「食事が終わったら、ちょっと様子を見てきて、一体何が起きているのか調べてきて」

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鈴木和香が馬場萌子に状況を探ってくるように言ったばかりで、馬場萌子がまだ調べに行く暇もないうちに、二人はレストランを出る時に噂話を耳にした。

レストランはホテルの4階にあり、レストランからエレベーターに行くには、喫煙所のあるロビーを通らなければならなかった。

食事の時間はすでに過ぎており、ロビーのソファには5、6人だけが座って、タバコを吸いながら談笑していた。

数人の話し声は大小様々だったが、どの言葉もロビーを通る人には十分聞き取れるほど明確だった。

「私はずっと言っていたわ。鈴木和香は実力で撮影現場に入ったわけじゃないって。今どき、実力派の人はたくさんいるのに、彼女みたいに指名されて撮影現場に入り、他の人を押しのけて女二号になった人なんて見たことないわ!」

馬場萌子はこの言葉を聞いて、思わず振り返って鈴木和香を見た。

鈴木和香は眉目穏やかで、ただ手を上げて馬場萌子に黙るよう合図し、熱心に会話している数人を驚かさないようにして、その場に立ったまま興味深そうに聞き始めた。