第171章 来栖スターが怒った(3)

ああ、違う、初めてじゃない。

四回目だ。

一回目は、彼女が『傾城の恋』の女二号を奪った時。

二回目は、彼女がスキャンダルを暴露して、彼女を殺そうとしたのに、逆に助けることになった時。

三回目は、彼女が待ち望んでいたバラエティ番組のゲスト出演を奪った時。

四回目が、今日だ。

一人の人間に四回も連続して負けるなんて。今日の撮影でNGを出した回数は、きっと芸能界で後々まで笑い話として語り継がれることになるだろう!

林夏音は考えれば考えるほど納得がいかず、最後には歯ぎしりしながら足早に歩き出した。

林夏音は自分がどの方向に向かって歩いているのかも分からなかったが、最後に芝生の広場に辿り着き、そこで何人かが忙しそうに働いているのを見かけた。

林夏音はその人たちを知らなかったが、撮影スタッフだということは分かった。

しばらく見ていて、ちょうど立ち去ろうとした時、スタッフたちは仕事を終えていた。林夏音は一応トップスターなので、スタッフたちも彼女のことを知っていて、若い女性スタッフの一人が声をかけてきた:「夏音姉。」

林夏音は笑顔こそなかったものの、無理に微笑みを作った。スタッフたちが忙しく働いていた場所に、鮮やかな花と緑の葉で飾られた綺麗なブランコが設置されているのを見て、美しいと思い、何気なく尋ねた:「あれは、これから撮影で使うんですか?」

その若いスタッフは、林夏音が自分に話しかけてくるとは思っていなかったようで、急に興奮した様子で頷いて答えた:「はい、この後和香姉の撮影で使うんです。」

鈴木和香?林夏音は少し眉をひそめながらも、まだ微笑みを浮かべたまま「ああ」と返事をした。

「夏音姉、サインをいただけませんか?」その若いスタッフはポケットから小さなノートを取り出し、林夏音の前に差し出した。

林夏音はペンを受け取り、サインをした。

若いスタッフは嬉しそうに林夏音に別れを告げ、先に行った他のスタッフたちを追いかけて行った。

林夏音はその場に立ち尽くしたまま動かなかった。スタッフたちの姿が完全に見えなくなるのを待ってから、セットアップされたブランコに近づき、それを一周してから立ち止まり、ブランコのロープをじっと見つめた。