第173章 来栖スターが怒った(5)

しかし、ブランコが最高点に達した瞬間、突然ロープが切れ、バランスを崩した鈴木和香は思わず悲鳴を上げ、そのまま地面に向かってまっすぐ落下していった。

監督はモニターを通してこの光景を目にし、顔に浮かんでいた笑顔が一瞬で凍りつき、まるで呆然としたように何の反応も示さなかった。

現場の見物人たちは、鈴木和香の悲鳴を聞いて、全員が撮影現場の方を見つめ、一斉にその場で固まってしまった。

大木にだらしなく寄りかかってスマートフォンを無関心に操作していた松本雫でさえ、急に体を起こし、手が震えて握っていた携帯が地面に落ちた。彼女は反射的に傍らに立っていた来栖季雄の方を見たが、言葉を発する間もなく、撮影を見ていた来栖季雄が突然飛び出していった。

ブランコが最高点に達したのは2メートルほどの高さで、地面までの落下にはほんの数秒しかかからないはずだったが、鈴木和香にとってはその数秒が無限に引き延ばされたかのように、とても緩やかに過ぎていった。

無重力状態になった瞬間、彼女は恐怖で目を固く閉じ、頭の中は混乱の渦となった。今度こそ終わりだと思った。一階分近い高さから何の前触れもなく落下すれば、重傷を免れたとしても軽傷は避けられないだろう。彼女が演じる女二号の出番は少なくなく、このままではドラマの撮影スケジュール全体に支障をきたすことになる。そうなれば、きっと非難の的になってしまうだろう。

鈴木和香の耳には落下による風切り音が響き、歯を食いしばり、拳を強く握りしめ、これから襲いかかるであろう激痛に心の準備をした。

しかし鈴木和香の体が地面に近づこうとした瞬間、突然遠くから一つの影が地面に滑り込み、その勢いを利用して彼女の真下まで滑り込み、しっかりと彼女の体を受け止めた。

現場全体が静止画のように凍りつき、静寂に包まれ、全員の視線が事故現場に釘付けとなった。

予想していた痛みは訪れず、鈴木和香は少し呆然として、まるで夢を見ているかのように、目を閉じたまま長い間動かなかった。

鈴木和香は決して重くはなかったが、高所から直接落下してきた衝撃で、来栖季雄は少しめまいを感じた。彼は地面に横たわったまましばらく体勢を立て直し、やがて何かを思い出したかのように急に起き上がり、自分の上に倒れていた鈴木和香を抱き寄せた。