第173章 来栖スターが怒った(5)

しかし、ブランコが最高点に達した瞬間、突然ロープが切れ、バランスを崩した鈴木和香は思わず悲鳴を上げ、そのまま地面に向かってまっすぐ落下していった。

監督はモニターを通してこの光景を目にし、顔に浮かんでいた笑顔が一瞬で凍りつき、まるで呆然としたように何の反応も示さなかった。

現場の見物人たちは、鈴木和香の悲鳴を聞いて、全員が撮影現場の方を見つめ、一斉にその場で固まってしまった。

大木にだらしなく寄りかかってスマートフォンを無関心に操作していた松本雫でさえ、急に体を起こし、手が震えて握っていた携帯が地面に落ちた。彼女は反射的に傍らに立っていた来栖季雄の方を見たが、言葉を発する間もなく、撮影を見ていた来栖季雄が突然飛び出していった。

ブランコが最高点に達したのは2メートルほどの高さで、地面までの落下にはほんの数秒しかかからないはずだったが、鈴木和香にとってはその数秒が無限に引き延ばされたかのように、とても緩やかに過ぎていった。