第213章 疑われた深い愛(1)

来栖季雄が立ち上がった時、視線は鈴木和香の顔に落ちた。少女が大きな瞳で自分を見つめているのを見て、彼の動きは思わず止まり、彼女の目と見つめ合った。

室内の雰囲気が、何となく甘くなってきた。

来栖季雄の鈴木和香を見つめる眼差しは、次第に熱を帯びていき、鈴木和香の心臓の鼓動も早くなっていった。

突然、男性の手がそっと上がり、鈴木和香の長いまつ毛が二度震えた。思わずゆっくりと目を閉じると、男性の長く温かい指先が彼女の頬に触れ、優しく拭い取った。

鈴木和香はまつ毛を二度震わせ、来栖季雄が唇の端に残った牛乳を拭ってくれたことに気付いた。無意識に目を開けると、来栖季雄の冷たい目の奥に、優しさが混じっているのが見えた。「おやすみ」

来栖季雄はそう言うと、鈴木和香の頭に手を置き、長い間そのままでいた。何かをしようとしているようだったが、結局何もせず、ただゆっくりと二度撫でて、立ち上がってソファーへ向かった。