第226章 疑われた深い愛(14)

来栖季雄のアシスタントは午後、全く車を運転して出かけていなかったのに、来栖季雄は田中大翔に対して車がアシスタントに持って行かれたと言い、相乗りしたいと……

彼は明らかに嘘をついていた……でも、なぜ嘘をついたのだろう?

環映メディアの社内で、彼女が何気なく和香がザリガニが好きだと言うと、その夜、来栖季雄は撮影クルー全員をザリガニ料理に招待した。

事故が起きた時、彼は真っ先に田中大翔と現場に駆けつけ、和香をじっと見つめた後、何も言わずにタクシーを拾って去っていった。

そして夜、和香が踊っている時、彼は和香を見つめて明らかに見入っていた。それに和香のバッグの中の小さな薬瓶も……

鈴木夏美は洗面台を掴む手に力が入り、指先が白くなるほどで、胸が激しく上下し始めた。

先ほどの予感が女性の直感だけだったとしても、今の鈴木夏美は百パーセントの確信はないものの、九十パーセントの確信を持っていた。鈴木和香こそが来栖季雄が何年もの間ずっと想い続け、決して諦めようとしなかった深い愛の対象だったのだと!