松本雫の美しく整った眉が少し寄り、心の中で何かがおかしいと気付き、表情が一瞬厳しくなった。「いつから君が見えなくなったの?」
「私たちと話していた時、トイレに行くと言って、それっきり戻ってこなかったんです…」
松本雫は馬場萌子の言葉を最後まで聞かずに、突然足早に温泉の方へ向かった。
馬場萌子は口を開いたまま言葉を止め、困惑して松本雫のマネージャーを見た。マネージャーも困惑した表情で、松本雫が何をしようとしているのか分からず、二人は慌てて松本雫の後を追った。
松本雫は赤ワイン温泉の池のそばに行き、元々プールサイドに置いてあった飲み物のボトルが全て消えていることに気付いた。他の温泉も見回してみたが、飲み物のボトルは片付けられていなかった。彼女は唇を固く結び、心の中で何かを察したように、温泉の外に向かいながら、後ろについてきたマネージャーに簡潔に指示した。「私の記憶が正しければ、このリゾート施設の社長が以前私に連絡してきて、協力したいと言っていたはず。今すぐ彼に電話して、協力してもいいから、まずこの温泉の監視カメラの映像を見せてもらって。すぐに見たいの」
松本雫のアシスタントは監視カメラの映像を見る理由は分からなかったが、とにかく電話をかけた。
電話を切ってすぐに、スタッフが松本雫を探しに来て、丁重に監視室へ案内した。
松本雫は大画面に映る多くの小さな画面を次々と見ていき、鈴木和香がトイレに入ってすぐ、林夏音が彼女のマネージャーとアシスタントを連れて入っていくのを見つけた時、松本雫の視線が少し冷たくなり、すぐにその画面を拡大するよう指示した。約10分待って、林夏音が出てくるのを見たが、3人が4人になっていた。
その中の一人は、髪で顔が隠れていて表情は全く見えなかったが、馬場萌子はすぐにそれが鈴木和香だと分かった。彼女はすぐに手を上げて画面を指差し、「和香ちゃん、和香ちゃんは林夏音に連れて行かれたんです!」
「林夏音が和香ちゃんを連れて行くなんて何のために?だめ、探しに行かなきゃ!」
そう言って、馬場萌子は監視室の外に走り出した。
「そこで止まって!」松本雫は急いで追いかけ、厳しい声で馬場萌子を呼び止めた。そして前に歩み寄り、馬場萌子の手首を掴んで言った。「林夏音のところに行ったところで、鈴木和香を返してくれると思う?」