第229章 疑われた深い愛(17)

林夏音は鈴木和香がトイレに行った時、自分のマネージャーとアシスタントを連れて後を追った。鈴木和香が意識朦朧として床に倒れた後、林夏音は自分のマネージャーとアシスタントに目配せをし、二人は前に出て鈴木和香を抱え上げ、彼女の髪を下ろして顔を隠し、彼女を支えているふりをした。そして、みんなが温泉に浸かっていて、こちらに注意を向けていない間に、素早く温泉を離れ、林夏音の専用車に乗って、撮影所のホテルに戻った。

林夏音はエレベーターで直接最上階に向かい、鈴木和香を連れて行き、我孫子プロデューサーのカードキーで部屋のドアを開け、鈴木和香を中に引きずり込んで、我孫子プロデューサーのベッドの上に投げ出すと、ドアを閉めて立ち去った。

自室に戻った林夏音は携帯を取り出し、我孫子プロデューサーにメッセージを送った:「我孫子さん、あなたが本当に欲しがっていたプレゼントをお部屋に用意しました。今すぐ温泉リゾートからホテルに戻って確認されることをお勧めします。」

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我孫子プロデューサーは温泉に浸かって少し疲れを感じていたので、湯から上がり、濡れた髪を拭きながらロッカールームに携帯を取りに行くと、林夏音が約10分前に送ってきたメッセージを見た。

我孫子プロデューサーは携帯の画面をしばらく見つめた後、携帯をしまい、すぐに着替えて会計を済ませ、アシスタントに運転させて真っ先に撮影所のホテルへ戻った。

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馬場萌子はみんなとの会話に夢中になっていて、誰かが温泉に十分浸かったから先に帰ると言い出すまで、鈴木和香がトイレに行ってからずいぶん経っているのに戻っていないことに気付いた。そこで立ち上がってトイレに行ったが、一周探しても和香の姿は見つからなかった。他の知り合いに会って別の湯船で温泉に入っているのだろうと思い、大小様々な湯船を一周したが、それでも和香は見つからなかった。そこで休憩室に戻った。

彼女と和香の荷物は同じロッカーに入れてあり、馬場萌子がロッカーを開けると、和香の服や鞄がまだ中にあった。

荷物があるということは、和香はきっと温泉の中にいるはずだと思い、もう一度温泉に戻った。

多くの人がすでに温泉に十分浸かって、次々と帰り始めていた。