第228章 疑われた深い愛(16)

我孫子プロデューサーは明らかに誰かと電話をしていた。林夏音は後半の内容を聞いて、寝室を開けようとした手を止めた。

我孫子プロデューサーは鈴木和香に興味があるのか……

彼女は一生懸命に彼の機嫌を取ってきたのに、何の得もなかった。もし鈴木和香なら、きっと何でも与えてもらえるだろう。

この業界では、利益を得るために自分の友人を裏切って寝取られの餌食にする人もいる。鈴木和香は林夏音が最も嫌う女だ。彼女を利用して利益が得られるなら、やらない手はない。

林夏音は唇の端に冷笑を浮かべ、我孫子プロデューサーの部屋には現れず、静かに立ち去った。そして、どうやって鈴木和香を我孫子プロデューサーのベッドに送り込み、彼の寵愛を得て、自分の望む利益を手に入れるか考え始めた。

ブランコ事件の教訓から、林夏音は今回の計画を来栖季雄が不在の時を狙って実行することにした。

その日は金曜日で、雨のため、撮影班の屋外撮影は晴れの日に延期され、午後と夜は休暇となった。

我孫子プロデューサーはその日、機嫌が良かったのか、夜にみんなを食事に誘った。

林夏音はちょうど生理で、お腹の調子が悪く、行きたくなかったが、来栖季雄が用事で街に戻ったと知ると、歯を食いしばってベッドから這い出し、きれいに化粧をして食事会に参加した。

我孫子プロデューサーの招待なので、もちろん誰も断らなかった。来栖季雄と彼女を街に送る田中大翔以外は、全員参加できる人が来た。

場所は山荘から近い温泉リゾートで、食事の後、我孫子プロデューサーは太っ腹にも皆を温泉に招待した。

林夏音は生理中で温泉に入れないため、温泉脇の休憩ベッドで他の人と話しながら、鈴木和香を注視していた。

温泉は温度が高く、長時間入ると脱水症状を起こしやすい。林夏音は大盤振る舞いで、マネージャーに飲み物を数箱買わせ、温泉のスタッフに頼んで、全員に一本ずつ配らせた。

鈴木和香、馬場萌子、松本雫、そして数人の女優たちがワインプールで談笑していると、スタッフが飲み物を持ってきて、親切にキャップを開け、一人一人に手渡した。

スタッフは誰からの差し入れかは言わずに去っていき、みんなも我孫子プロデューサーからのものだと思い、特に気にせず話しながら飲んでいた。