第224章 疑われた深い愛(12)

鈴木和香は赤いドレスを纏い、素足で真っ白な大理石の床の上に立ち、優雅に舞い始めた。

監督が設定した場面は非常に美しく、背後には大きな窓があり、窓の外には輝く街の灯りが広がっていた。カーテンは白く、壁も白く、床さえも白かった。唯一、鈴木和香のドレスだけが赤く、その色彩の強烈なコントラストが、和香の舞姿をより一層引き立てていた。

鈴木和香がより深くダンスに没入できるよう、BGMが流されていた。

撮影現場には、美しい音楽の音以外、何も聞こえなかった。

後ろに反り、脚を上げ、跳躍する。赤いドレスが風になびき、裾が舞い上がる。

彼女は靴を履いておらず、小さな足が赤いドレスに映えて、白磁のように美しかった。

来栖季雄は松本雫の傍らに立ち、まずスマートフォンを取り出してメールを見るふりをし、その後落ち着かない様子で鈴木和香の方を見た。窓際で舞う和香の姿を目にした瞬間、彼の表情が一瞬揺らいだ。

本来なら来栖季雄はもう一度スマートフォンを見るはずだったが、彼は和香の舞姿を見つめ続け、自分が今撮影中だということさえ忘れてしまい、体の中で言い表せない熱が渦巻いていた。

離れた場所にいた監督はモニターを通してこの場面を見て、眉をひそめた。来栖季雄がアドリブで演技を加えたのだと思い、「カット」とは言わなかった。

しかし、しばらく経っても、来栖季雄は反応を示さなかった。

来栖季雄の隣に立っていた松本雫は、隣の男性が長い間動かないことに違和感を覚え、季雄の方を振り向いて見ると、彼が明らかに上の空だった。そして反射的に監督の方を見ると、監督は眉をひそめ、明らかに不機嫌そうだった。

松本雫はとっさのひらめきで、不注意を装い、手を滑らせ、手に持っていたコップを「パン」と床に落として粉々に割った。

割れる音で来栖季雄は我に返った。

監督は我慢の限界に達し、「カット」と叫んだ。

松本雫は監督が何か言う前に、笑顔を浮かべ、落ち着いた様子で言った。「申し訳ありません。先ほど気が散ってしまいました。もう一度撮り直しましょう。二度とこのような失態は起こしません。」

松本雫の態度が良かったため、監督も特に何も言わず、スタッフに補修メイクを指示した。