第238章 彼女だけは触れてはいけない!(8)

「来栖社長、もうやめてください!このままでは人が死んでしまいます!」

来栖季雄は助手の言葉を一切無視し、助手を乱暴に突き飛ばすと、割れたグラスの破片を握りしめたまま、激しく突き刺そうとした。

助手は素早く来栖季雄の腰に抱きつき、全力で後ろに引っ張って二歩ほど下がらせながら、大声で叫んだ。「社長!もし誤って人を殺してしまったら、あなたも終わりですよ!」

来栖季雄の目からは炎が噴き出しそうで、狂ったように助手の腕をふりほどくと、我孫子プロデューサーに向かって再び突進した。

鈴木夏美は、来栖季雄が狂人のように、凶器となったグラスの破片を我孫子プロデューサーの喉元に突き立てようとする様子を目の当たりにし、思わず手で口を覆い、動揺の表情を浮かべた。

助手はその光景を見て焦りを隠せず、思わず寝室で意識を失っている鈴木和香の方を振り返り、咄嗟に叫んだ。「社長!君が意識不明です。早く病院に連れて行かないと大変なことになります!」

その言葉は魔法のように、来栖季雄の動きを一瞬で止めた。

彼の手に握られたグラスの破片は、我孫子プロデューサーの喉からわずか2センチの距離で止まっていた。

彼は殴られて顔が腫れ上がった我孫子プロデューサーを睨みつけ、胸が激しく上下し、手にしたグラスをきつく握りしめ、唇を噛んでから、激しくグラスを投げ捨てた。

我孫子プロデューサーは恐怖で慌てて目を閉じた。

グラスは彼の耳をかすめて飛んでいき、近くのテレビに直撃して画面にひび割れを作り、粉々に砕け散った。

我孫子プロデューサーは恐怖で震え上がり、全身が小刻みに震えていた。

来栖季雄は気が済まないといった様子で、近くのテーブルを蹴り倒すと、我孫子プロデューサーの首を掴んで身を乗り出し、彼を睨みつけながら呼吸を整え、鋭い口調で言った。「芸能界で何をしようと、誰を寝取ろうと、私は関知しないし、どうでもいい!」

ここまで言った時、来栖季雄の目に意外にも赤みが差し、我孫子プロデューサーの首を掴む手に力が入り、青筋が浮き出た。漆黒の怒りの目に破壊的な狂気が走った。「だが警告しておく。鈴木和香だけは特別だ。彼女には手を出すな!さもないと、私とお前は徹底的に争うことになる!」