一瞬にして言い表せない恐怖と後悔が、来栖季雄の全身を這い回った。
もし彼女が本当に自分のいる撮影現場で何か危険な目に遭っていたら、一生自分を許せなかっただろう。
来栖季雄の喉は何かに詰まったように痛くなり、両手を伸ばして、鈴木和香が点滴を受けた絆創膏の貼られた手を握った。
彼の脳裏に、我孫子プロデューサーの部屋に突入した時の光景が蘇った。彼女が我孫子プロデューサーに押し倒され、虚ろな目をしていた姿を思い出すと、心の底が刃物で切り裂かれるような痛みが走った。
彼は彼女の手を握る力が思わず強くなり、何かを悔やむように、そっと彼女の細くて柔らかい指に口づけた。
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病室の外で待機していた助手は、午前2時になってようやく限界を感じ、階下の車で仮眠を取ることにした。深い眠りについた時、突然車の窓をノックする音が聞こえ、助手は夢うつつの中で目を覚まし、ぼんやりと窓を下ろすと、まだ眠っている鈴木和香を抱きかかえた来栖季雄が外に立っているのが見えた。
助手は驚いて完全に目が覚め、急いで車を降り、後部ドアを開けた。来栖季雄が鈴木和香を抱いて車に乗り込んでから、助手も再び運転席に座り、何度もあくびをしながら尋ねた。「来栖社長、これから撮影現場に戻りますか、それとも桜花苑に戻りますか?」
一晩中眠れなかった来栖季雄は、目の下にクマができ、顔色も悪かったが、それでも彼の端正な容姿は損なわれていなかった。彼は目を伏せ、抱いている女性をより快適な姿勢に調整してから顔を上げ、低い声で答えた。「桜花苑だ。」
助手は空気を読んで黙り込み、ただ車を発進させて桜花苑へと向かった。
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車が桜花苑に到着した時、千代田おばさんはすでに起きていて、車の音を聞くと家から飛び出してきた。来栖季雄が鈴木和香を抱いているのを見て一瞬驚き、「奥様はどうされたのですか?」と尋ねた。
来栖季雄は何も言わず、鈴木和香を抱いたまま家に入り、階段を上がって柔らかく快適なベッドに彼女を寝かせ、布団を丁寧にかけてから、そっと部屋を出て扉を閉めた。ドアの前に立っている千代田おばさんに淡々とした口調で言った。「朝食はお粥を作ってくれ。あまり油っこくないように。」
千代田おばさんは頷いて、「はい」と答えた。