来栖季雄がこの数年間、ずっと忘れられない深い想いを寄せていたのは、鈴木和香だった。
病院から帰る道中、彼女は眠っているように見えたが、頭の中では考えていた。来栖季雄は鈴木和香とそれほど親しくなかったのに、一体どうやって彼女のことを好きになったのだろうか?
時には、そういう方向で考えていなければ、何も問題に気付かないものだ。でも、何かに気付いてから振り返ってみると、初めて問題の所在が分かるものだ。
高校時代、季雄は全ての集まりに参加していたわけではなかったが、和香が出席する集まりには必ず顔を出していた。
ただ、二人はほとんど話すことがなく、時には遠く離れた席に座っていて、何かを連想させることは本当に難しかった。
鈴木夏美は高校三年生の時のことをはっきりと覚えていた。椎名佳樹が野外活動を企画し、夜は山腹でテントを張って寝ることになった。テントの中は蒸し暑く、結局みんな外で寝ることになった。夜中にトイレに起きた時、季雄が和香の傍らに座っているのを見つけた。その時は眠くて深く考えなかったが、トイレから戻ってぼんやりと目を開けた時、季雄が和香の体の上で手を振り続けているのを見た。