第241章 あなたは彼が誰を好きか知っていますか?(1)

「大丈夫?深刻な状態?」

「今、病院にいるの……もう大丈夫だから……迎えに来て……うん、市立総合病院……」

鈴木夏美は電話を切り、病室の方へ向かった。来栖季雄に挨拶をして、もうすぐ帰ることを伝えようとしたが、ドアまで行く前に、ガラス越しに、来栖季雄がベッドの横に座り、タオルで鈴木和香の肌を拭いているのが見えた。

鈴木夏美は足を止め、病室の中を食い入るように見つめた。

来栖季雄は非常に慎重に、真剣に拭いていた。まるで我孫子プロデューサーが鈴木和香の肌に残した感触を全て消し去りたいかのように。

拭き終わると、来栖季雄は助手が持ってきた服を手に取った。鈴木和香の体は来栖季雄に隠れていて、彼も背を向けていたが、鈴木夏美は彼の後ろ姿から、彼が彼女に服を着せる動作が、きっと優しく丁寧なものだと想像できた。