第282章 失望させてしまったの?(2)

赤嶺絹代は鈴木和香に座るように声をかけながら、執事にお茶を用意するよう指示を出した。来栖季雄に座るように声をかける様子は全くなく、すぐに鈴木和香の方を向き、優しい笑顔で気遣いの言葉をかけた。「和香、最近はどう?撮影は大変じゃない?」

「大丈夫です」鈴木和香は軽く微笑んで、丁寧にお礼を言った。

「そう、それならよかったわ。もし大変だったら、撮影はやめてもいいのよ。鈴木家で働きたくないなら、椎名家に入れることもできるわ…」赤嶺絹代の言葉が途中まで出たところで、執事が三杯の湯気の立つお茶を載せたトレイを持ってきた。

執事はまず一杯を赤嶺絹代の前に置き、次に鈴木和香の前に一杯を置いた。最後の一杯はただテーブルの上に置かれただけで、来栖季雄に飲むように勧めることもなく、ただの形式的なものに過ぎないようだった。